〈 利他行 〉

 台風30号のフィリピンの被害は目を覆うばかりで被災者への同情を禁じ得ません。台風の被害もさることながらその後に見られた略奪や支援物資を求めての報道を目にし驚き、唖然としました。
 単純な比較はできないとは思うものの東日本大震災や阪神大震災にあっても被災者は助け合い、支援物資を求めての列も整然とし弱者(老人・女性・子供)と呼ばれる人に対しての思いやり・配慮は世界の人々を感心させたことは記憶に新しく、日本人の心の豊かさに自信を待ちました。これらの行動は人間なら当然とも思いましたが、世界的には特異なことと思われていることを知りました。
 この日本人の思いやりの精神的な根本とは何か、それは日本の長い歴史の中で日本人の心の中に培われた「利他行」という心ではなかろうかと思います。
 「修証義」にー利他を先とせば自らが利省かれぬべしと、しかには非ざるなり、利行は一法なり、普く自他を利するなり(利他を軽んじ利己を重んじて、先ず自利を先とするものが多い。真理はそうではない。自分と他人は融合して一つの利益になっているのが道理である。)ー「日々の力」教育新潮社刊)とあります。また、先日、京都の天台宗の真如堂を訪れた折、ある部屋の掛け軸に天台座主による「自忘利他行」の書を見ることができました。宗派を問わず仏教の根本の教えの一つが 〈利他行〉ということを知ることができました。
 楽天イーグルスの嶋選手会長が4月29日に仙台スタジアムで「この一ヶ月半で分かったことがあります。それは、誰かのために闘う人間は強いということです。」との言葉は多くの人に感動を与えましたが、まさしく「誰かのため」とは〈利行〉だと思います。
 昨年のロンドンオリンピックで競泳男子のメドレーリレーメンバーが、「康介を手ぶらで帰すわけにはいかない」と言ってメダルを手にしたのことを思い出します。
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