〈 布施(ふせ) 〉

 ある方から、「二月の古称の如月(きさらぎ)は着更着(寒いので着物を更に着る)が語源だよ」と言われました。語源については諸説あるようですが、まさにその通りと納得してしまう程寒い毎日です。しかし、もう少し我慢すると寒が明け、節分が過ぎ、彼岸となります。庭の水仙が今か今かと満開の準備をしています。「春よ来い。早く来い」
 今月は「布施」について考えたいと思います。
 『修証義』には「衆生を利益すというは四枚の般若あり、一者布施、二者愛護、三者利行、四者同時是れ則ち薩たの行願なり、其布施というは貪らざるなり・・・」 とあります。
 この四つについて佐藤俊明氏はその著書『修証義に学ぶ』「講談社」で
 「この布施・愛語・利行・同時の四つの智慧を四摂法(ししょうほう)といい、これは菩薩の誓願であり、また実践徳目であります。その第一が布施です。」と述べています。 また、小島昭安氏はその著書『心をたがやす』「総持寺出版部」で、
 「布施の語源はサンスクリットのダーナで゛施す人゛という意味です。布施行には大別して○財施(物やお金を施すこと)○法施(正しい教え、よい方法を伝えること)○無畏施(恐れを取り除け安心させ慰めの言葉をかけること)」の三つがある。こうした布施行を実践するに当たって大切なことは゛施してその報いを当てにしない゛心が一番肝要である。」と書いています。
 つまり、「布施」とは「最も大事な実践項目の一つで人々のために物やお金を施したり、正しい教えを伝えたり、人々に安心させ慰めることであり、大事なことはその代償を求めずその布施行自体を意識しないこと」と考えます。昨年の暮れの朝日新聞の投書欄に駅のホームで線路に落ちた老人を救い名も告げず立ち去った高校生を褒めるのではなく、危険な行動とたしなめることが賢明とする投書が載っていました。しかし、この意見に対し高校生を賞賛する投書が多かったことに安心しました。
 多くの大人の不祥事が報道される中、また自分のことしか考えない風潮の中に於いて自分の危険を顧みず老人を救った高校生の行為はまさしく「布施行」と言えるものではないでしょうか。
 
inserted by FC2 system